英国産ウールは世界のウールのわずか3%しかないとても希少価値の高い羊毛です。正しく、ウールの女王です。 英国には現在約4千万頭の羊がいます。丘陵地・山岳地・低地などの生息地によって、羊の特徴も異なっており、純粋種だけでも約40品種に及び、その他多数の交配種が存在しています。 これらの羊は品種別に次の三つに分けられます。
1.山岳種
主にスコットランド地方及びペナイン山脈に沿った山岳・丘陵地帯、 ウェールズ地方に生息し、丈夫で粗い羊毛を産出します。 主として高品質のカーペット羊毛として使用されております。
代表品種:スウェールデール、ブラックフェイス、ウェルシュマウンテン チェビオット等


(Swaledale)
2.長毛光沢種
イングランド地方のミッドランズ(中部地方)を生息とし、 毛足が長く光沢のある羊毛を産出します。 主として服地やメリヤス、毛編毛糸用として使用されております。
代表品種:ティーズウオーター、ブルーフェイスレスター、ロムニー


(Teeswater)
3.短毛ダウン種
英国南東部の低地(ダウン)地方に生息し、 毛足が短く密で中細の羊毛を産出します。 主としてふとん用の中綿やフランネル服地、 ツイード等に幅広く利用されています。 代表品種:ドーセットホーン、クラウンフォレスト、サフォーク


(Suffolk)
1.弾力性
他の羊毛と比べて、英国羊毛はミクロン当りのクリンプが多くなっております。 特に短毛ダウン種の羊毛はクリンプが極めて多く、カサ高があリます。また伸び縮みする弾力性が 非常に高いので、メリヤス製品等には最高の素材となっています。クリンプのより少ない山岳種の羊毛は繊維を曲げた場合、元へ返ろうとする反発力が非常に強いので高品質のカーペットに適しています。

2.耐久性

英国の厳しい気候に耐え抜く羊から産出される英国羊毛は、大変丈夫で風雨を跳ね返す力を持っています。また、こすってもすれにくい英国羊毛製品は型くずれし難いのが特徴です。

3.光沢

英国羊毛ほどの光沢の強い羊毛は他に例を見ません。特に長毛光沢種の羊毛は、モヘアに近い美しい光沢を持つ事で世界的にも有名です。これらの羊毛は耐久性と光沢が求められる服地の原料として理想的です。

4.自然色

英国の羊毛は真っ白なだけでなくて、黒やグレーの毛を持つ羊もいます。特にイングランド北西部の湖水地方のみに生息するハードウイック種のグレーや、ウェールズ地方に生息する黒い羊ハードウルシュマウンテンのダークブラウン、まだら模様の羊ジャコブのチャコールグレー等が特に知られています。この様な自然色を生かして染めずに紡ぎ、ユニークな生地やカーペット等を作る事が出来ます。
1.意義
英国はヨーロッパ最大の羊毛産出国で、約8万人の牧羊業者が約4千万頭の羊を飼い、毎年約 4千5百万キロから5千万キロの羊毛を産出しています。個々の牧羊業者が能率的に羊毛を売る ことが出来るように、英国政府は1950年農政法に元づき毛織物産業の中心地である北イングランドのウエストヨークシャー州ブラッドフォード市に英国羊毛公社を設立しました。
牧羊業者及び買い手双方の利益の安定を図る為に、公社では英国で毛刈りされる原毛全てのマーケティング活動を行なっています。

2.英国羊毛の売買

英国内で毛刈りされた羊毛を牧羊業者より一括して市場価格で買い上げ、 200あまりの等級に仕分けして、公社で一年に24回開かれる オークションにかけて、羊毛卸商に販売します。

3.英国羊毛の品質管理

毛織物業界の要求する厳しい条件に応えることにより、牧羊業者が羊毛からできるだけ多くの利益を得る事が出来るように公社では品質改善の為の「クリーンウールキャンペーン」を実施しています。その為に、短いビデオやパンフレットを配布して品質管理の最善策を牧羊業者に訴えると共に、罰金制度を導入してペイントの付いたフリースや植物が絡んで駄 目になったフリースから一定の金額が差し引かれることになっています。また、質の高い羊毛を産出する羊を育成する為の品種改良の指導や、種羊のフリースを無料で査定するサービス、毛刈り職人の認定試験や羊毛の仕分けの専門家グレーダーのトレーニングなど、牧羊業者に対して様々なサービスを提供しています。

4.英国羊毛のプロモーション
英国羊毛をプレステージイメージの高い素材として位 置付け、市場における差別化を図る為の ライセンス制度を設けています。公社の登録商標である羊飼いの杖に英国の国旗をあしらったシンボルマークは、厳しいライセンス契約に基づいて加入を許されたライセンシーの製造する英国羊毛製品に限ってのみ交付されます。
英国本国での「英国羊毛クオリティ大賞、日本での「英国羊毛ライセンス大賞」で英国羊毛の普及に貢献したライセンシーを表彰する為のインセンティブを行なっております。

英国羊毛公社では高級ウールふとんや純毛毛布等の寝具に最適の素材を普及させる目的で、日本国内に於いてライセンス制度を取り入れています。
羊飼いの杖に英国の国旗をあしらった英国羊毛公社商標は、 「ブリティシュウールマーク」または「ステッキマーク」と呼ばれており 一定の基準を満たす厳選された最終製品ブランドに、 ライセンス契約によりその使用が認められております。 ステッキマークは、英国羊毛のフリース・ウールのみを使用した良質な製品にだけ許可されます。 フリース・ウールとは、生きた羊から熟成した毛刈り職人が刈り取ったウールのことを言います。
従って食肉用のとさつ屠殺した羊から抜かれたウールにしばしば混入するスキン(皮膚片)や、ウールを脱毛する為に使用した薬剤の残留などが無い事が特徴です。
現在寝具部門をはじめ、紡績、生地機屋、アパレル、毛編毛糸、カーペット等各部門にわたり120社以上の企業が、ライセンシーとして英国羊毛の普及とプレステージイメージによる英国羊毛製品の展開に携わっております。
寝具関連部門では、原則として寝具問屋などブランドを持つ企業と製造元の企業が共にライセンスを取得する事になります。
寝具製品のライセンス許諾の基準は、英国羊毛の混率が100%または50%以上の天然素材の寝 であること、ポリエステル等の固綿入り寝具については、巻き綿が100%英国羊毛で全体の50% 以上の重さを占めること、当該製品が高品質でプレステージイメージにふさわしい事などです。英国羊毛公社商標つき製品の販路は百貨店や専門店に限られ、量 販店・スーパーマーケットなどでの販売は認めておりません。ライセンスは申請書類その他によって審査され、最終的には英国羊毛公社本部により許諾されてはじめて英国羊毛公社の商標が認められます。

資料提供:英国羊毛公社